下部町(八坂)
(現身延町)

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八坂の大ミズナラ    

サビて字がほとんど読めない

すっかり落葉した大ミズナラ
2001,11,26

富士の眺めが素晴らしい

最初話をしてくれた今福さんは
一番奥の家
手前は天空採園宿泊施設


廃校


全山紅葉の八坂 後方三方分山
2001,11,18



下部町八坂
標高1100M 三ツ沢峠手前

町指定天然記念物 出所100選
目通り4.5M
樹高25.0M
山道を20分ほど歩いてゆくと忽然と現れる
看板がサビて字が見えないので直してほ
しい

八坂は「やさか」ではなく「はっさか」と読む
地図を見ると精進湖と本栖湖の北側の山
の裏にあたる。行ったこともなく、見ただけ
で随分遠そうなところである。行ってみてそ
の実感を新たにした。身延町の垈、早川町
の夏秋それよりも一回り奥である
八坂という道標を頼りに林道に入る。舗装し
たてのいい道である。でも行けども行けども
対向車はなく民家もない。これはおかしい
道を間違えたのではと頭をよぎる。電信柱
があるので 人が住んでいるに違いない。
すると廃校が見えてきた。こんな山奥の民


八坂拡大図


上九一色村側入り口

※案内看板は1つもないので注意


家のないところに学校?更にしばらく行くと
天空採園と書かれた大きな看板があり、下
に民家もある。行って大きな声で呼ぶと男
の人が出てきてくれた。今福正孝さんで
ある。70歳をすぎていると思うが、健康そ
うで、山に住む人共通の優しい顔をしてい
る。
すごい山の中ですねと切り出すと武田信
玄の落ち武者の来たところと言う。みん
な今福さんである。廃校の話をすると中
学もあって自分もそこを出たという。当時
は人口も増えたそうである。その後人が
減って廃校になった。いつ廃校になった
か覚えていない。それほど前のことであ
ったらしい。今は5軒であるが、常住は自
分と大家さん2軒であと3軒は盆と正月
に来るのみと言う。奥さんと2人暮らし子
供は近県にいるとか。この人たちが亡く
なれば山は住む人が無くなるのか?そ
れでも若い人が人を呼ぼうと、天空採園
といってシイタケや山菜を採取できる農
園を始めたばかりである。今福さんは植
林の仕事をとている。昔はスギを植えた
がダメだという。ヒノキがいいので今はヒノ
キを植えている。でもヒノキが大きくなった
ときヒノキもダメかもしれないともいってい
た。富士山や毛無山を南に見ながらいつ
までも山の生活が続くのを祈るのみである
大ミズナラは炭にしようかとのはなしもあ
つたがやめたそうである。空洞があるらし
いが見た目では分からなかった
2001,8,20撮影

2001,8,28再訪問
芦川村のケヤキとリョウメンヒノキを見た帰り
林道折門古関線が上九一色役場の近くか
ら八坂に抜けるのではと考え、下部町役場
に聞くとやはりそうだという。スタンドで道を
聞き、役場から南500Mの点滅信号の所
から林道に入る。林道は寺川グリーン公園
を通り高度をかせぎ、釈迦ケ岳の北斜面を
抜け八坂に着いた。舗装したての道だ。
前回話した今福さんはおらず、50歳前後
の天空採園を経営している今福さんが来て
くれ木や山の話を色々する。天空採園は
宿泊もでき、会員制でシイタケづくりの体験
や山の自然にふれたりすることを目的に最
近始められたようだ。なかなか面白いアイ
デアだ。頭もいいらしい。素晴らしい林道
ができたので脱都会派にはお勧めだ。
昔近くの神社にスギの大木があつたが、
家が火事で焼けたとき、材木として切って
しまったそうだ。切った後御神木なので相
当もめたそうである。八坂付近には町指定
の天然記念物が三ツ沢にヨコグラノキ1本、
地蔵峠にツガそれと八坂沢筋辺りに無
指定のカツラがあるとの情報をえる。日を
改めて見に来ることにする

アクセス
国道300号みちの駅しもべと聖トンネル
の先から林道30分。道は昨年舗装が終
わったばかりであり運転しやすい。
天空採園から500M、松がある小さな峠
の所から精進湖の看板に従い徒歩20分、
道は山道であるが平坦で歩きやすい
※上記に書いたように県道甲府精進湖線
上九一色村役場近くからも釈迦ケ岳越え
ではいることができる。甲府南インターか
らは便利だ。霜あるいは雪で冬季通行止
になることがあるので注意。チェーンかス
タッドレスを用意のこと。但し、下部町側は
通年入れます。通行止の情報はお問い
合わせください
大八坂も廃村になっていた。

(上の廃校の写真と比較してください)
おりかどふるぜき                                            ・
林道折門古関線も約12年振りだ。「道の駅しもべ」の先から「沢」への道に入る。
途中何と廃屋が多いことか。気のせいかも知れないが12年前に比べると過疎が
一層進んでいる様な気がする。一体日本はどうなってしまうのだろう。”豊かさと
貧困”これは日本の”表と裏”だ。
「沢」から先の林道は落石が多かった。人が住んでればこんな落石は排除され
ないはずだ。ひょっとして”廃村”そんなことが頭をよぎる。御弟子(みでし)に
来ると集落に下りる道の茶畑が綺麗に刈られていたので住んでいるのではと
期待をもたせる。その先の学校跡地には12年前には廃校の木造の校舎が残っ
ていたが、取り壊されて立派な記念碑が建っていた。取り壊しは記念碑の日付の
平成22年であったのかも知れない。明治10年から閉校の昭和48年までここで
学び遊んだ子供達や親や先生の悲喜交々が忍ばれる。
更に15分ほどで大八坂に着いた。道端にある菜園の看板も色あせどうも人は住
んでいない様だ。推測だが林道の開設と舗装により会員制の菜園を始めたものの
長引く不況で経営は難しかったのだろう。もう一人の今福さんも高齢で山を下りた
のかも知れない。立派な林道も廃村や過疎を食い止めることは出来なかった。
ただ道路のみが残る。そして廃村になった山には再び人はもう戻っては来ない
だろう。ただ荒れ行くのみか・・・・。
(8/29身延町役場に御弟子と大八坂の廃村を確認しました)

2013,8,28撮影

三ツ沢のヨコグラノキ

三ツ沢集落
下部町八坂三ツ沢

下部町指定天然記念物
目通り30p
樹高7.0M
今福太喜男さんに教えていただいた
クロウメモドキ科の落葉低木
この辺ではカワヤナギと呼んでいるそ
うである
1884年牧野富太郎博士が高知県横
倉山で最初に見つけた。山梨でも所々
にあるようだが数が少ない稀少種

木を見た後少し上の三ツ沢集落に行く
4軒ある。一番下の今福さんに話を聞く
ことができた。ヨコグラノキが分からなか
ったので持っていった葉を見せるとそう
だという。あそこには現在1本しかない
そうである。木に看板を吊したら人が
来て木を切ってしまったので看板をは
ずしたそうである。上の方にまとまって
生えているところがあるそうである
今福さんは甲府に家があり夏ここが
涼しいので時々遊びにくるそうである
少し上の尾根に町指定のツガの木が
あると教えてくれた。地蔵峠のものよ
り太いそうである

アクセス
沢集落を過ぎると道が二手に分かれる
右に曲がり舗装していない道を500M
ほど行くと大きな看板がみえる
木はこの前の沢を渡った所に横たわる
ように生えている

2001,9,1撮影

八坂のカツラ
下部町八坂

無指定
目通り4.0M
樹高20.0M
今福太喜男さんに教えていただいた
カツラとしては中位の大きさである

アクセス
沢集落を過ぎると道が二手に分かれる
左手の舗装している道を500Mほど行くと
倉庫のような建物があり近くの沢の脇にあ


2001,9,1撮影

地蔵峠のツガ  
下部町八坂
地蔵峠(栂の峠ともいう)

町指定天然記念物
目通り3.3M
樹高16.3M
樹齢500年
南側半分が根元から傷み、幹も写真
で分かるように葉がない。手当の必要
を感じる
葉の生え方はコメツガの様にも感じる

なお天空採園から山道に10M入った
ところに目通り4.0Mほどのツガ(写真
左)がある。無指定

アクセス
天空採園から山道2.5q徒歩40
分。道は分かりやすく平坦で歩きや
すい。但し10分のところで道が2本
に分かれているが、右精進湖、三方
分山の方へは行かないで西へ直進
のこと

2001,9,4撮影

三方分山のミズナラ林とブナ林  
さんぽうぶんざん

ミズナラ純林

ツガ林

三方分山 三つコブがある
頂上は一番右
下部町八坂
三方分山(さんぼうぶんざん) 
1,422M 北尾根

ミズナラ
三ツ沢峠から先の道が尾根道になる
付近からミズナラの純林である
目通り 3.0M 最大

ブナ
尾根道でミズナラに混じり点在するが
数は多くない。また、大きいものは少な

目通り 1.5M 最大 写真上
今福正孝さんに御坂町黒岳のブナの
話をすると三方分山にもあるというので
今回訪れたが、ミズナラ主体でブナは
少なかった。でもいい登山ができました

ツガ
頂上に近づくに従い多くなる。写真左
目通り 2.0M 最大

アクセス
大ミズナラより登山70分。八坂より精
進湖へ抜ける道で案内板もしっかりし
ている。子供連れはきついかも

2001,11,26撮影
ありました!ありました!ブナの大木 (訂正) 

大木がまとまってある所
頂上東方200M

最大のブナ

根元で10本程度に枝分かれしたブナ

頂上より富士山を望む
木が全くないので富士の眺望が素晴らしい

精進湖を望む

イタヤカエデと思われる大木
女坂峠への中腹
2001,11,26八坂から頂上に登った
時はミズナラ主体でブナの大木は見
つからないとしましたが、今回精進湖
女坂峠経由で頂上に登った所、頂上
東200M付近に十数本のブナの大木
を発見しました
目通り 3.5M 最大 1本 根元に空洞
     3.0M 2本         あり
     2.7M 3本
     2.5M 10数本
また頂上西100Mには根元で10本程
度に枝分かれした幹周囲6.0Mほど
の大木1本がありました
ブナが純林を形成している黒岳には
本数ではかないませんが、最大の太さ
はほぼ同じでした
1回の登山では山は分からない!
ここに訂正いたします
精進湖〜女坂峠 1時間 標高差200M
女坂峠〜頂上  1時間  〃  300M
(登山ルートの行政区は上九一色村精
進です)
案内板は少ないが道は整備されていて
歩きやすい。女坂峠から上は急坂で少々
きつい
三方分山とはうまく付けたもので、登って
みて分かったが頂上で道が3つに分か
れている
上九一色村役場側の古関から女坂峠
近くまで入る林道があるようです
精進湖の村は空き家が多く、村の人に聞
くと土砂災害をおそれて少し南の精進民
宿村に移ったそうである

2002,4,23撮影

三ツ沢の大ツガ   

近くの半分の太さのツガ
下部町三ツ沢

無指定
目通り 6.0M 恐らく山梨一であろう
樹高 20.0M
樹齢 300年 推定

今福太喜男さんよりかねて教えてもらっ
た地蔵峠のツガより立派なツガを見ようと
やってきた
一番上の今福益行さんに道でお会いで
き詳しい場所を教えていただいた
巻道から道のない尾根道を這い上がる
下草やヤブはなく道がなくても歩きやす
い。標高差で100M、時間にして10分
で尾根近くにつく。そこに目通り2.5M
ほどのツガがある。大木には違いがない
のだが期待したより少し細い。おかしい
と思いながら上をみると別の大木が見え
る。近づくと根回り4.0Mほどのミズナラ
であるが、根元で枝分かれしている
すると家内が30M位離れた所にもう1本
大木があるという。ひょっとしたらと近づい
てみると正しくツガの大木であった。最初
に見たのの倍の太さである
樹高は余りないが枝を横に大きく広げ、
ドッシリと太い幹は根元近くでよじれ古木
の風格をみせている。神々しいまでに神
秘的に、オレがこの山の主だよとばかり
に夕暮れの林に立つ姿は存在感で圧
倒する。山奥までやってきてよかった!
感動させられる木の1本であった!
町指定の天然記念物のようだが、道もな
ければ案内看板1本もない。善処を望み
たい所だ→その後役場に聞いた所、指
定ではないそうだ。私の聞き間違いです
ので訂正いたします。早期の指定を期
待したい(2002,11,20)

アクセス
三ツ沢の集落から登山往復1時間。
15分ほど沢沿いの道を行き、沢を渡り
細い横道を約300M、少しなだらかに
丸くなった所から尾根づたいに道のな
いところを這い上がる

今福さんより山の生活を聞くことができた
田富町に家があるが、定年を過ぎ子供も
大きくなったのでここに戻ったという。町の
生活はゴミゴミし嫌いだという。63才だそ
うだが10才は若く見える。山で生活すると
きっと生き生きし若く見えるのだろう。小さ
いころの楽しい思い出が忘れられないの
だろう。多分年金で生活には困らないの
だろう。狭い畑に稗や野菜を植え、秋に
はキノコを採りに行くという。山に植林す
るのは山が荒れるので反対だと言ったの
には驚いた。見識なのだろう。沢の近く
に風呂小屋があり薪で風呂を焚いてい
た。満天の星を見ながらひとり風呂には
いるのだろう。日本人が忘れていた何千
年と続いた生活がここにはある。自然の
中でジッと自分を見つめる生活がここに
はある。多分今福さんには「こだわり」が
あるのだろう。そう言う話は全く話さなかっ
たが感じることができた。
また山登りが好きだという。今は「百名山」
1本で、最近は利尻富士と屋久島宮之浦
岳に登り、60峰を越えたという
もう一度来てゆっくり話を聞きたいものだ
2002,10,28撮影

2002,12,1案内板設置のため再訪問
 奥さんにお会いすることができた。ツガ
はまだ見たことがないそうだ。ここは武田
信玄の落ち武者が来たそうだがと尋ねる
とやはりそうだという。この家の先祖は武
士でここに来て刀鍛冶をやっていたそう
である。今でも鉄のかすが出るそうである
昔植えたワサビ田にワサビを再び植える
計画があるそうである

2003,3,23
勝沼町大石神社と小淵沢町岩窪諏訪
神社のツガの写真を届けにやって来た。
幸い今福さんは在宅で写真を渡すこと
ができた。指定に向け努力したいと語
っていた。帰りに吉備団子を頂き生ま
れて初めて食べたがおいしかった!
大ツガの道は崩落し廃道となっていた。もうあの勇姿は見られないのか
 
約10年振りに三ツ沢にやってきた。今福さんの家の前で声を掛けたが返事はなかった。
あの大ツガをもう一度見たいと沢に沿った暗い杉林を登る。当時と変わったことは杉林
の下にシイタケのほだ木がビッシリ並んでいる。沢を詰めていよいよ大ツガに至る巻き道
に進む。そこには杉の木に2本のテープが巻いてある。以前は気が付かなかったが
直進の道もあった。右の薄い巻き道を50m程進むと道がザレて殆ど跡形がない。落ちて
死ぬ様なことはないとしても怪我をすることは間違いないだろう。ロープでも張ってあれば
行けないことはないかも知れないがここで断念する。
10年の歳月は短い様でもありまた長い。まさか道がこんなになっているとは!あの山梨県
一と思われるツガの勇姿はもう見られなくなってしまうのだろうか?
せめてもの救いは三ツ沢は今福さんを含めて2軒が住んで廃村になっていないことだ。

2013,8,28撮影

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